同一労働同一賃金|派遣社員の賃金、派遣料金の見直しについて
2020年3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、時間短縮営業・休業・出社制限などへの対策が講じられ、経済が停滞している中でも、派遣先企業・派遣元企業は労働者派遣法を順守しながら活動を続けなければなりませんでした。
厳しい状況でしたが、コロナ収束後にこれまで以上の企業活動ができるよう、コロナ禍を耐え抜いてきました。
そして今後、また派遣社員を採用するために、派遣社員の待遇改善についてお伝えします。
目次
派遣社員の賃金動向|コロナ禍の影響と派遣社員の待遇
まずは働き方改革の一環とされる「同一労働同一賃金」から振り返ります。
この制度は、正規雇用・非正規雇用の間における、賃金・待遇などの不合理な格差をなくすことを目的として定められました。
働き方改革関連法の成立は2018年6月。制度の適用開始は、大企業で2020年4月、中小企業で2021年4月です。
しかし働き方改革が施行される時期、新型コロナウイルスの感染が広がりました。
休園・休校が多発するだけでなく、都道府県からは不要不急の外出を控えるよう要請があり、しかも新型コロナウイルスに感染してしまえば、濃厚接触者は隔離措置となります。
多くの企業では通常営業がままならず、同一労働同一賃金に向けた必要業務の洗い出しすら難しい状況です。
人材派遣サービスを利用する企業の中には、残念ながら派遣社員だけは出社させ、直接雇用の社員には感染予防対策として休業やリモートワークを許可するというケースもありました。
派遣社員の待遇をなぜ是正すべきか、分かりやすい事例と言えるでしょう。
コロナ影響下における派遣社員の待遇・派遣料金の見直し
コロナ禍の影響は大きく、休業・時間短縮営業を余儀なくされる企業が増えました。
派遣元企業の中でも、派遣先のない派遣社員を解雇・契約更新しないケースがあったでしょう。
コロナ禍は異常事態です。このような時だからこそ、直接雇用の社員と同等の仕事をする派遣社員に待遇の差をつけ、切り捨てるような選択肢はなくさなければなりません。
派遣社員であっても、直接雇用の社員と同じように“等しく労働者の生活を守る”。そのため企業には、休業補償や雇用先の確保など、派遣社員の待遇や賃金について見直しが求められるのです。
賃金水準・倍率の公開|労働局の対応と次年度の賃金見直し
2020年10月21日、厚生労働省より令和3年度の「職種別の賃金水準」と「地域別の倍率」が公開されました。
同種の業務に従事する一般賃金水準の計算は、令和元年の職種別基礎値が元になっています。
【一般賃金水準の計算方法】
一般労働者の職種別基本給×能力(経験調査指数)×地域指数
令和3年度の職種別賃金
同種の業務に従事する一般賃金は、派遣労働者の最低賃金。令和3年度は各業種・地域で賃金上昇の傾向があり、ベースアップや昇給が期待されていました。
そんな折、新型コロナウイルス感染拡大のあおりを受け、多くの企業で賃金を上げることが厳しい状況になってしまったのです。
本来であれば派遣労働者の賃金は、令和3年度適用の「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」が使われますが、今回は特例措置として令和2年度適用の水準を用いることが認められました。
なお、派遣社員の雇用維持と確保を前提にした特例措置を受けるには、各都道府県の労働局に事業報告書・届けを提出する必要があります。
評価実施と派遣料金の調整|賃金水準の変化と派遣先企業の懸念
派遣社員の評価は、派遣元企業が派遣社員の賃金を見直すために行われます。
◆派遣賃金を決める「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」 | 派遣管理システム グッジョブ
派遣先企業と派遣元企業の評価協力
派遣元企業は年に一度、派遣社員の能力やスキルの向上を評価します。
派遣社員の評価は派遣元企業の義務ですが、派遣元企業のみで判断できるのは勤続期間や勤怠情報など。
そこで派遣元企業は派遣先企業へ評価の協力を依頼し、派遣社員の業務上での能力・スキル向上を確認します。
派遣元企業から派遣先企業に、派遣社員の評価様式・評価項目が提供される場合もありますが、例として派遣社員の評価内容を挙げます。
■派遣社員の評価内容の例
・業務の内容について
・業務を遂行するにあたり必要なスキルと処理能力
・勤務態度や勤怠
・業務に取り組む姿勢
・目標・目的の達成など
派遣社員の評価は、同一労働同一賃金へ取り組む重要なポイント。
派遣元企業と派遣先企業は協力し、公正に派遣社員を評価してください。
◆派遣先企業必見!「待遇情報の提供」で使用する様式・フォーマットは?
同一労働同一賃金|派遣料金の配慮義務
派遣社員は過去、直接雇用の社員ではないからと賃金・福利厚生などの待遇面で格差をつけられる雇用形態でした。
同一労働同一賃金が施行されてからは、各企業でも非正規労働者の格差をなくすための取り組みが進んでいます。
日常がいつ戻るとも知れない状況下で、とても賃金を上げられないという場合もあるかもしれません。しかし前述したように、派遣社員の賃金引き上げが困難な場合は、特例措置などを利用することも可能です。
まずは企業活動を継続すること。その上で、派遣社員の賃金を徐々に上げていくことを検討するといいでしょう。