グッジョブコラム 2024.04.17

\労働時間の上限規制猶予終了/新たに適用される業種や変更点など要点を解説

働き方改革の一環として労働時間の上限規制が段階的に行われていきました。2024年4月からは、いよいよ、規制を猶予されていた最後の業種にも適用が拡大します。適用される業種は、建設業や自動車運転業、医業など。まずは、4月以降の労働時間の上限が何時間でどのようなルールを守らなければいけないのかという基礎知識を紹介します。また、これらの業種がなぜ長時間労働になりがちなのか、法対応のために企業がとらなければいけない対応など、根本理由と対応策についても解説していきます。

1、労働時間の上限規制とは

2019年に働き方改革の一環として「労働基準法」が改定され、労働時間の上限規制が始まりました。働き方改革では、ワーク・ライフバランスの健全化や業務効率化の徹底がはかられており、以前は「業種によっては仕方がない」と暗黙のうちに容認されていた長時間労働を、全業種で平等になくしていこうとする大きな動きでした。
この労働時間の上限規制は19年4月に大企業、2020年4月以降に中小企業はと段階的に適用されてきました。最後の猶予業種である4業種にも適用開始となるのが、間近に迫った24年4月となります。

2、上限規制が適用される業種と基準

2024年4月まで労働時間の上限規制を猶予されていたのは4業種です。以下のような仕事をしている人には、労働時間の上限規制が適用されます。

・建設事業
建物やインフラを含む工事事業に従事している人。災害時の復興事業を除いてすべての業務に上限規制が適用されます。

・自動車運転業
トラック・タクシー・バスなどのドライバー。特別条項付き36協定を結んでいる場合のみ、適用の例外があります。

・医業
医師・医療従事者。特別条項付き36協定を結んでいる場合のみ、適用の例外があります。

とくに、建設事業・自動車運転業・医業の3業種について、規制の具体的な内容を確認していきましょう。

2、労働時間の上限規制の具体的な内容とは

4月から労働時間の上限規制が適用される業種が守らなければいけない基準を、従来と24年4月以降で比べて見ていきましょう。

【2024年3月末まで】
労働時間の基準は「法定労働時間」といいます。この原則として、「月間45時間・年360時間」が定められた労働時間です。残業や休日出勤といった法定労働時間を超過する場合は、「特別条項」として労使合意(36協定)を締結することで「法律上制限なし」として長時間の労働が可能でした。

【24年4月1日以降】
法定労働時間を超えるいわゆる残業時間は、特別な事情や「特別条項」による労使合意がある場合でも以下の範囲内にしなければなりません。

・年間で720時間、1カ月で100時間未満(休日労働含む)
・時間外労働(休日労働を含む)の合計:月間で100時間未満、2~6カ月の間のすべての平均がひと月あたり80時間以内
・時間外労働で月間45時間を超えられるのは、年間で6カ月が限度

これを守れない場合には罰則ももうけられています。「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科されるおそれもあり、大変拘束力が強い法改正だといえるでしょう。

●2業種の例外措置

今回、労働時間の上限規制が適用される業種のうちでも、自動車運転業と医業については特別条項による36協定を結ぶことを条件に、一部例外が認められています。

・自動車運転行
「特別条項」による労使合意を結ぶ場合、年間の時間外労働・休日出勤は最大で960時間が上限となる。

・医業
「特別条項」による労使合意を結ぶ場合、年間の時間外労働・休日出勤は最大で1860時間が上限となる。また、「時間外労働と休日労働の合計が月間100時間未満」と「2~6カ月の平均時間がひと月あたり80時間以内」、「時間外労働で月間45時間を超えられるのは年間6カ月」という3つの上限規制は適用されない。ただし、医療法の「追加的健康確保措置」の定めに従う必要がある。

3、業種が抱える課題と上限規制への対策

24年4月から上限規制の対象となる業種にはどのような課題を抱えているのか、法改正によって企業がとらなければいけない対策を確認していきましょう。

●建設業

建設業が長時間労働になりがちな理由
そもそも、建設業では決まった工期内で業務を完遂させる必要がありますが、天候や資材費用の高騰、人手不足など、企業単体では解決できない課題を抱えています。そのため、労働者の1日当たりの労働時間を長くすることで帳尻を合わせるしかなかったのも現実です。また、既存の建物の改修工事では、建物内のテナントが稼働していない間のみ工事を行えるため、休日も加味した作業工程が当たり前になります。シフト制勤務が通常となるため、曜日を固定した週休2日の取得も難しい状況です。

建設業の企業がとらなければならない対策

・従業員の勤怠の実態把握
あいまいな労働時間管理はできなくなりますので、従業員の勤怠状況をリアルタイムで把握し、密に管理する必要があります。出勤・退勤時間だけでなく、休憩時間や残業時間、研修・訓練時間などについても正確に記録、管理が求められます。

・記録保存
事業者は正しい記録付けや勤怠管理と同時に、労働時間の状況記録を保存する義務が加わります。保管期間は5年間です。

・週休2日制の促進
国土交通省の調査によると「建設業で週休2日以上の休日を取ることができている事業従事者は全体の1割にも満たない」ということです。週末の連日休暇取得が難しい状況であっても、2日分の休養が取れる体制作りが急務となっています。

●自動車運転業

ドライバーが長時間労働になりがちな理由
タクシードライバーは、自由化により一度は増加しましたが、コロナ禍による外出規制のあおりを受けて、ここ数年でかなり数が減少しています。また、働く人にとっては終電後の大切な「足」としての役割がありますので、長時間労働になりがちな業種です。
また、トラックドライバーの長時間労働は労働環境の問題だけでなく、慢性的な人手不足や人件費・ガソリン代の高騰など複合的な課題を抱えています。物流業では「2024年問題」として早くから提起されていましたが、労働時間の上限規制によって、一人当たりの労働時間を短縮する分、人手が必要です。それにともなう人件費上昇も避けられません。少し前に道路交通法のルール改正によってドライバーと同乗者の確保が必要になったことも影響しています。物流の要でもある配送業では、再配達による工数増加もクリアすべき課題のひとつです。

自動車運転業の企業がとらなければならない対策

・時間外労働の割増賃金率を増加
限られた人数のドライバーで効率的に業務を行うためには、適正配置を見極めるといった「労働環境の改善」や「労働生産性の向上」が必要です。効率化だけでなく、工数に見合う賃金となるよう、業界全体で賃金体系の見直しも迫られています。

・効率化システム導入
物流や配送に関わるトラックドライバーでは、受取人不在や住所記載ミスによるコスト増をくいとめる施策、再配達の件数削減のため、システム導入が必須となっています。代引き払いを廃止するといった自社サービスの見直しを進めているほか、受け取りポストの増設といった他社サービスとの連携も必要になっています。

●医業

医療従事者が長時間労働になりがちな理由
た様子は日本中誰しもが目撃した事実でしょう。励ましや感謝を伝えつつ「医療現場なら仕方がない」とどこかで思っていたのではないでしょうか。働く側も「休むわけにはいかないという使命感」にかられていた部分は大きいです。人の命に関わる職業は私より公が優先される部分が大きいことは事実ですが、明確な限度は設けなければなりません。

医業がとらなければならない対策

・残業時間制限
長時間勤務が当前とされていた医療労働者をとりまく業界「慣習」を改革する必要があります。法改正への対応だけでなく、災害や病禍といった非常事態でも、エッセンシャルワーカーの労働時間が常識外にならないルール作りは急務です。

・追加的健康確保措置
医業は上限規制が適用される業種の中でも、特別条項による労使合意の締結を条件に、労働時間が長いままとできることとなります。ただし、医療法の「追加的健康確保措置」を厳守することが必要です。時間外労働時間・休日労働時間が月間100時間以上と見込まれる医師全員に対して、面接指導、勤務間インターバルの確保が義務付けられます。これに対応できる体制作りが必要です。

4、新たなルール適用で労働時間管理に困ったら「グッジョブ!」がおすすめ!

働き方改革に基づき、2024年度もさまざまな労働・就業に関するルール、法改正が進みます。企業の人事部や派遣業に携わる人は、「いつ」「どのように」法律が変わるのかをちくいちチェックし、従業員が適切な環境で働けるよう配慮しなければなりません。

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