グッジョブコラム 2023.12.06

【派遣の労災】派遣社員の労災手続きと給付|派遣元・派遣先どちらに申請?

雇用形態に関係なく、すべての労働者に加入義務のある「労災保険」。派遣社員が勤務中に事故やケガをした場合も、認定が通れば労災保険が給付されます。
ここでは、派遣社員が労災の手続きをするとき、派遣元企業・派遣先企業のどちらに申請すればよいか、労災手続きの詳細や給付の種類などについてお伝えします。

労災保険とは

労働者が通勤を含む業務中に、ケガや病気になる、事故に遭うなどした場合、これを「労災(労働災害)」と呼びます。
労災は、基本的に労災保険を適用させるものですが、健康保険を使うケースもあります。

労災保険とは

労災保険とは、労働者の仕事中に起きたケガ・病気・死亡など、業務災害や通勤災害に対する保険給付制度。届け出の上、認定が通れば労災保険が適用されます。
労災保険では基本的に、治療費や医療費の自己負担はありません。
ただし医師が必要と認めない特別な治療、また個室を希望する場合などは、自己負担になる可能性があります。
労災認定が下りない場合は「健康保険」を使う
労災を届け出ない場合、また労災認定が得られないものの通院が必要なケースでは、「健康保険」を使います。
健康保険は、業務外のケガ・疾病・出産・死亡などに対し、診療費または給付金が支払われる制度。健康保険の利用で医療費が自己負担限度額を超えた場合、限度額適用認定証を受けることで、一部の負担額が払い戻されるケースもあります。
健康保険における治療費・入院費などの自己負担金は、年齢や所得で変動しますが、原則3割負担です。
なお、健康保険は労災保険と併用できません。

労災保険と健康保険の違い

労災保険と健康保険の違いをまとめました。

労災保険制度が適用される災害

労災保険には、次の2種類があります。

・業務災害(補償給付)
・通勤災害(給付)

業務災害

業務災害では、業務中に発生した災害に対して労災保険が給付されます。
労災保険の適用には、次の認定が必要です。

1.務の遂行性:労働者と使用者の間で労働契約の関係があること
2.業務の起因性:就労先での業務が原因であること

通勤災害

通勤災害では、通勤中に発生した災害に対し労災保険が給付されます。
労働局により通勤と認められる定義は、以下の3つです。

・就業先と住居間の往復
・就業場所から他就業場所への移動
・住居と就業場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動
(※転勤前の居住から転勤先への通勤が困難と判断された「単身赴任労働者」に適用)

労災給付は「8種類」

労災認定を受けた場合に給付される労災保険は、以下の8通りです。詳細は後述します。

①療養給付
②休業給付
③傷病年金
④障害給付
⑤遺族給付
⑥葬祭料
⑦介護給付
⑧その他の給付

① 療養補償給付(療養給付)

「療養補償給付」は、病院の治療にかかった費用を給付するもの。労働者の自己負担はありません。

・治療費、入院費、看護料、手術費用、薬代など

②休業補償給付(休業給付)

「休業給付」は業務上のケガなどで治療や療養のため休業が必要となり、休業期間に給料がもらえない場合に給付されます。
・休業4日目から休業終了までが給付の対象(給付基礎日額×60%)

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③ 傷病補償年金(傷病年金)

「傷病年金」では、治療開始から1年6カ月経過しても完治しない場合、疾病等級表の定めにより等級別に疾病補償年金が給付されます。

④ 障害補償給付(障害給付)

「障害給付」は、治療開始から1年6カ月経過しても完治せず後遺症がある場合、給付されるもの。
給付内容は疾病等級別で、障害補償年金と障害補償一時金に分かれます。

・障害補償年金:後遺症障害等級が第1級から第7級
・障害補償一時金:後遺症障害等級が第8級から第14級

⑤遺族補償給付(遺族給付)

「遺族給付」は、労働災害により労働者が亡くなった場合、遺族補償年金または遺族補償一時金として給付されます。

・遺族補償年金:死亡した労働者の収入で生活を維持していた遺族が対象
・遺族補償一時金:遺族補償年金の対象遺族がいない場合に、一定の遺族に給付される

⑥葬祭料補償給付(葬祭給付)

「葬祭給付」は、労働災害により労働者が亡くなった場合に給付されます。

・給付額は、31万5000円に基礎日額30日分を加算した金額

⑦介護補償給付(介護給付)

「介護給付」は、疾病年金や障害年金を受給していて、かつ介護の必要な人が対象の給付です。

⑧その他の補償給付

疾病年金・障害給付・休業給付・遺族給付には、基本の給付以外に特別給付が加算される場合があります。

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労災申請|派遣元・派遣先企業の対応

派遣社員による事故やケガが生じたときの、派遣先企業と派遣元企業の対応をまとめました。

労災申請|派遣先企業の対応は

労災が生じてしまったら、派遣先企業は速やかに派遣元企業へ連絡します。
のちに派遣元企業で労災を請求する際、「災害の発生状況・場所・時間」といった情報が必要となります。
派遣先企業は、災害に遭った派遣社員の証言や一緒に働いていた従業員からの情報をまとめておきましょう。

労災申請|派遣元企業の対応は

労災が発生した場合、派遣元企業は労災請求書を作成しなければなりません。
派遣元企業は、派遣先企業へ災害発生状況の詳細をしっかりとヒアリングしてください。
労災請求書を作成したら、所轄の労働基準監督署に提出し、労災保険の認定を受けます。

労災申請によるハラスメントに注意

現在の労働基準法では、労災による休業期間中・休業後30日は労働者を解雇できません。
また労災保険の申請をきっかけに給料を下げるなど、労働者の待遇を変更するとハラスメントになるため、派遣先企業や派遣元企業は注意してください。

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派遣社員の安心・安全な勤務のために労働環境を見直し適切に管理する

労働者派遣法の改正により派遣社員の待遇は改善されつつあります。
しかし働き手を確保するために、人材派遣業界全体でこれまで以上に、安心・安全な労働環境を整備しなければなりません。
派遣企業では、派遣社員一人一人の勤怠状況に目が行き届くよう情報をシステム化するなどして、派遣人材を適切に管理する必要があります。

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