グッジョブコラム 2023.07.19

派遣社員の評価が難しい件

はじめに
2020年4月の派遣法改正により、労使協定方式を採択する派遣会社に対して派遣社員の就業評価が義務付けられました。労使協定には「賃金の決定に当たっての評価」について明記する必要があります。

派遣社員は派遣先で働くという特徴から、正社員以上に公正かつ適正な評価運用が難しいのが実情です。しかし、評価は働く本人のモチベーションアップにつながる大変重要な要素です。

今後、ますます派遣社員の処遇改善やキャリア支援を行う際のよりどころとして重要性を増していく「派遣社員の評価」。

今回は、より良い評価制度の導入についてお伝えします。

派遣社員の人事評価を派遣先も行うべき理由

派遣社員の人事評価を行うべき理由は、派遣先企業も派遣元と協力して賃金を見直すために協力するという配慮義務が設けられており、派遣社員であっても人事評価をすることが推奨されているからです。そのため年に一度、派遣社員に対する評価を実施する際、派遣元は派遣先に評価の協力を依頼する場合があります。

必要と考える一方で評価が難しいと考える担当者は多い!

2017年に行われた「派遣社員の評価に関する派遣先担当者調査結果」によると、約8割の派遣先担当者が、派遣社員のモチベーション向上や処遇改善、正社員登用のポイントとして評価が必要であると考えていることが明らかになりました。

 

一方で、派遣社員の評価は難しいと答えた派遣先担当者は約6割にも上ります。

担当者のほとんどが評価を行うべきだと考えているにも関わらず、明確な判断・評価基準が設けられていないことが要因で、派遣先企業で派遣社員の人事評価が導入でいきていないのが実情です。

正社員と同様に、派遣社員にも適切な人事評価制度を導入し、運用できるシステムがあれば、この問題は解消できる見込みがあることがうかがえます。

グッジョブの注目すべき評価機能とは?

グッジョブでは、厚生労働省作成の「派遣労働者の待遇改善に向けた対応マニュアル」に基づき、評価機能を導入しています。以下に引用して説明します。

各人の業務の内容や能力を待遇に反映させる仕組みができていない場合(労使協定方式)

同じ職種であっても派遣先により担当する業務内容やその難易度に違いがあるので、公正な評価を行わなければ労働者の不満につながる可能性があります。

その対応策として、最も一般的な「職務に基づいた等級」の考え方を以下にご紹介します。

【対応策の考え方】
統一型:全ての派遣労働者の待遇を同一の等級制度と賃金制度によって決定

職種別型:職種ごとに設定された等級制度と賃金制度によって待遇を決定
L 職務に基づいた等級
L 能力に基づいた等級

【制度設計から待遇決定までの手順】
手順① 等級制度の設計
・対象となる職種を職務の難易度の観点から複数の等級に区分し、各等級の内容を定義する。

手順② 賃金制度の設計
・各等級に対応する賃金額を一定の幅を設けて決定する
・なお、賃金額は以下の条件を満たすように設定する
・最低の賃金額が、厚生労働省局長通知に示された当該職種の一般賃金の基準値(地域指数を加味)と同等以上とする
・各等級に対応する賃金額は、厚生労働省局長通知に示された「能力・経験調整指数」を参 考に決定する

手順③ 評価制度の設計
・職務の内容・能力・成果などを評価する評価制度を設計する

手順④ 個々の労働者の待遇の決定
・手順①~③で設計した等級・賃金・評価制度に基づき、個々の労働者の待遇を以下のように決定する
a. 初めて派遣される派遣労働者については、派遣先での職務の難易度を見て対応する等級に格付けし、待遇は本人の能力・経験に応じて当該等級の賃金額の範囲で決定する
b. その後は能力・成果を評価し、その結果に基づいて当該等級内で昇給を決める
c. 職務の難易度が向上した場合は、格付ける等級を変更し、aとbに基づいて待遇を決定する

派遣先によって評価基準が異なり、統一した基準で評価ができない(労使協定方式)

派遣労働者の業務の遂行状況などについて、派遣先から提供された情報を踏まえて評価を行う場合には、派遣先によって評価基準が異なり、派遣元が統一した基準で派遣労働者を評価することが困難なケースがあります。

その対応策として、評価結果の妥当性と客観性を高めるため、派遣元で作成した評価表を派遣先と共有し、評価基準の擦り合わせを行ったうえで派遣先に評価してもらうやり方があります。さらに、派遣労働者の自己評価も踏まえて評価を決定することもあります。勤務態度やスキル・能力・成果に対する評価決定のプロセスを明確化すれば、派遣労働者・派遣先・派遣元の三者、各々が納得する評価基準を設けることができます。

【工夫点】
*評価に対する考え方について派遣先と事前共有
・評価表を共有し、派遣元で設定した評価項目、基準に基づいて評価するよう依頼する。
・日々の行動に基づいて評価するよう依頼し、評価した具体的な行動を共有する。

*派遣労働者の自己評価の考慮
・派遣労働者と個別面談を実施して、派遣先からの評価と派遣労働者の自己評価の擦り合わせを行う。
・派遣先からの評価と派遣労働者の自己評価が大きくかけ離れている場合は、派遣労働者・派遣先・派遣元の三者で面談を実施して認識合わせをすることが望ましい。

派遣先の人事評価結果の妥当性を判断できない(派遣先均等・均衡方式)

派遣先社員との職務内容の違いや、日々の働きぶりを直接把握することができないため、派遣元が評価の妥当性を担保できず、派遣労働者が人事評価に対して納得しがたいケースがあります。

その対応策として、派遣受入開始時に、期待する役割や職務内容について派遣元・派遣先・遣労働者の三者で擦り合わせを行います。また派遣期間中は、派遣労働者の業務遂行状況を派遣先と定期的に共有すると良いでしょう。

【工夫点】
*派遣先の人材条件の把握
・派遣先における募集ポストの業務内容・役割・必要なスキルや経験などについて、詳しく情報を収集し、人材要件に合致した人材を派遣するよう努める。

*具体的な役割・期待値の認識の共有
・派遣契約が成立した際には、改めて派遣労働者が担う役割や期待値を派遣元・派遣先・派遣労働者の三者で共有しておく。なお、派遣受入時には、派遣労働者の目標設定も同時に行い、明文化しておくことが望ましい。

*定期的な業務遂行状況の情報共有
・業務遂行の状況について、定期的に派遣先担当者と情報を共有し、派遣元責任者が、派遣契約終了後に公正に評価できるよう努める。

*評価結果の確認
・派遣先の評価については、具体的な事実に基づき、客観的に判断されているかを確認する。なお確認を口頭で行う場合も、話した内容を記録しておくことが望ましい。
・派遣労働者の評価を行う際は、派遣先と共有した業務遂行の状況などについての情報に基づき決定する。派遣労働者が評価結果に納得しない場合は、派遣先担当者を交えた三者で面談することも有用である。

出典https://www.mhlw.go.jp/content/000874343.pdf 

まとめ

弊社では、派遣企業間で利用できる人材情報管理システム「グッジョブ」を提供しています。
グッジョブの関連機能「スタッフ評価機能」では、派遣先企業でテーブルや評価項目・実施時期などを細かく設定でき、評価結果を派遣元企業に通知・共有できます。

派遣先が派遣社員を評価するにあたっては「評価に基づいて適切に評価をすること」に留意しなければなりません。適切な評価ができていれば派遣社員のモチベーションアップや生産性の向上、能力の高い人材の確保につながります。逆に、適切な評価が行われていないと判断されれば行政処分の対象となることからも、ルールに基づいた適切な評価運用は必要不可欠です。

上記のスタッフ評価機能について、詳しく知りたい方はぜひこちらから問い合わせいただき、グッジョブのご利用をご検討ください!