派遣先必見!―社会保険加入確認義務―
1 はじめに
今回は2022年後半から各地の労働局セミナーで注意喚起され始めた、派遣先による「社会保険加入確認」についてご説明します。
以前までは比較的強く言われておらず、未対応であっても「指導」が入るということはありませんでした。
しかし、一部エリアで口頭指導・指導書などが出るようになり、この取り組みは全国的に広がっていくものと予想されます。
2 社会保険とは?
社会保険とは、公的医療保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険の5つの保険をまとめたものを指します。ここではそれぞれの保険について説明します。
- 公的医療保険(健康保険・国民健康保険)
「公的医療保険」は、私たちが怪我や病気などをした際に、医療費の負担が軽減される保険です。企業の従業員が加入する「健康保険」と、個人事業主が加入する「国民健康保険」の2種類があります。 - 厚生年金保険
「厚生年金保険」は、企業の従業員や公務員が加入する公的年金制度です。老齢年金・障害年金・遺族年金などとして支給されます。 - 雇用保険
「雇用保険」は、失業した際に生活を支えるための保険です。加入の期間や失業後の行動によって、失業保険や再就職手当などが支給されます。 - 労働者災害補償保険(労災保険)
「労災保険」は業務中・通勤中の怪我や事故などに対し、企業が必ず加入しなければならない保険です。労災保険の保険料は事業者が負担する決まりで、派遣社員の場合は派遣元企業がこれを負担します。 - 介護保険
「介護保険」は要介護認定を受けた場合に、保険料が1割負担になる保険です。40歳を超えると介護保険の加入が義務付けられ、公的医療保険料(健康保険料)とともに徴収されます。
また、社会保険への加入手続きは、雇用主である派遣元企業が行います。ただし社会保険の加入対象者が国民健康保険に加入していた場合、加入対象者はあらかじめこれを脱退する手続きを行わなければなりません。
3 派遣社員は社会保険に加入できるのか
そもそも派遣社員の社会保険加入について、あまり詳しくないという方も多いかもしれません。
結論から言えば、派遣社員であっても、条件さえ満たせば社会保険に入ることができます。
2022年には、派遣社員のような短時間労働者に対する社会保険の適用が拡大され、以前は雇用期間が1年以上見込まれていることが要件になっていましたが、現状は雇用期間が2カ月を超える場合も適用されるようになりました。
“2022年10月からの法改正により、社会保険の適用範囲が拡大しました。
1週間の所定労働時間が雇用元である派遣会社に勤める正社員の4分の3以上(1カ月の所定労働日数が15日以上、かつ、1週間の所定労働時間が30時間以上)であれば、社会保険に加入できます。”
参考:https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html
参考:令和4年10月からの社会保険適用拡大について(日本年金機構)
3-1 派遣先は労働・社会保険の加入確認義務がある
ところで、社会保険の加入は派遣元に任せれば良いのでしょうか。
派遣法第 35 条第 2 号では、派遣元は健康保険・厚生年金・雇用保険の資格取得確認などの事実を派遣先に通知しなければならないと定めています。
また、労働・社会保険の加入は派遣元会社の義務ですが、派遣先にも社会保険の加入について確認する義務があります(派遣先が講ずべき措置に関する指針 平11・労働省告示第138 号)。理由が適正でないと考えられる場合には、派遣元に対し労働・社会保険に加入させてから派遣するよう要求しなければなりません。具体的には下記の通りです。
そして、派遣先は確認したことを「派遣先管理台帳」に記載する必要があります。社会保険加入の確認を怠ると指導の対象になりますし、確認の記録を派遣先管理台帳に記載しないと罰則の対象になります。
前述したように、以前は派遣先が社会保険に加入していない派遣スタッフを受け入れても、特に問題視されることはありませんでした。しかし、2022年後半から各地の労働局セミナーで強く注意喚起されるようになり、実際に一部エリアでは口頭指導や指導書が出たという報告も上がってきています。
厚労省発信の資料にも記載されていますが、派遣先は社会保険加入を確認しなければ指導が入る状況になっており、派遣先による「社会保険加入確認」は2023年の労働局調査トレンドになると予想されます。
3-2 社会保険に加入しないのは可能?
一方で、さまざまな事情で派遣社員として働いているものの、中には社会保険に入りたくないという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、加入条件を満たしていれば、社会保険に加入する義務があります。加入しないと事業主・従業員ともに違法となり、社会保険料より高い罰金を支払うか、6カ月以下の懲役が科されます。
詳細はこちら 健康保険法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070
また、仮に、社会保険に加入していないことが確認された場合、最大2年をさかのぼって社会保険の総額を労働者と会社で折半しなければなりません。保険料よりはるかに高い罰則金を支払わなければなくなることからも、知らなかったでは済まされない問題として注意が必要です。
社会保険に加入したくないという申し出があった場合には、月額8.8万円(年収106万円)を超えないようにシフトを調整するなど、条件を満たさないような働き方に調整してみてください。
4 まとめ
前述の通り、2022年10月から新たに社会保険の加入対象となった派遣社員に対し、社会保険の加入手続きを行う必要があります。該当する派遣社員に対しては、都度、資格取得の届け出を準備しなければなりませんが、派遣会社ごとにさまざまな方法で提出されると管理が煩雑になりがちです。
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