派遣先企業に対する「労働局の調査」が増加?調査実態と指導内容
現在人材派遣について、労働局の派遣事業担当部署「需給調整事業部」による調査が増えています。
この労働局調査は、派遣元企業・派遣先企業ともに行われるものです。
ここでは調査件数が増加している理由や、定期指導での対応を説明します。
目次
労働局「需給調整事業部」による指導や訪問について
いまではよく知られる働き方の労働者派遣ですが、人材派遣が可能になったのは1986年と比較的最近のこと。
労働者の派遣においてはこれまでの約30年間で、派遣切りなどさまざまな問題があり、そのたびに厚生労働省は、認可業である人材派遣のありかたを見直してきました。
そして2020年、厚生労働省は「派遣社員」と「企業に直接雇用される労働者」の待遇差を減らす目的で、労働者派遣法を大きく改正しました。
労働局の調査が活発になったのはこの時期からです。
派遣元・派遣先企業が労働局から調査される理由
厚生労働省は、派遣労働者の労働条件・権利を守るため、「派遣社員であっても正社員と同じ労働については同一の賃金を支払うべき」としています。
これに基づき労働局では、これまでの調査に加え「同一労働・同一賃金実施のための労使協定方式に関する事項」なども調査・指導するようになりました。
労働者派遣法は、頻繁に改正される法律。
厚生労働省としては、派遣元・派遣先の企業が“現状の労働者派遣法に準じた人材管理・人材派遣をしているか”を確認する必要があるわけです。
労働局調査で問題があればどうなるのか
労働局調査の結果、労働者派遣法に違反していた、または法律違反ではないが改善したほうがよい場合、次の書類で警告されます。
- 是正勧告書:労働状況などが法律を違反しているとき
- 指導票:法律には違反していないものの、改善してほしいケース
いずれの場合も、はじめは警告の意味合いで書類が発行されるため、勧告・指導に沿って指摘箇所を改善すれば問題はありません。
ただし労働局の勧告・指導に従わずにいると、最悪の場合企業は送検され、罰則を受けることになります。
また万一情報を改ざんしたり事実を隠したりなど、虚偽の報告をした場合には、30万円以下の罰金、もしくは送検・逮捕されるケースもあります。
労働局は何を調査・指導するのか
労働局は何を調査・指導するのか、派遣元企業・派遣先企業にわけて、調査の流れや内容を解説します。
なお必要な書類については、こちらで紹介する内容以外にも求められる場合があります。
調査の基本的な流れ
労働局調査の流れは次のとおりです。
- 労働局調査で求められる書類を用意する
(次項の「派遣元企業に対する調査」または「派遣先企業に対する調査」参照)
- 労働局へ書類を持ち込む
- 調査が行われる
- 調査に対する「是正指導書」を受け取る
- 1か月ほどで指導内容を改善
- 労働局に「是正報告書」を提出
派遣元企業に対する調査
派遣元企業は3年から5年に1回程度、労働局より調査を受けます。
この調査では、主に以下の書類が求められます。
- 派遣社員の契約書
- 派遣社員の就業状況がわかる書類等
- 派遣元管理台帳
- 抵触日通知書
- 労働条件通知書の写し
- 就業条件明示書の写し
- 派遣先通知書の写し
- 時間外・休日労働に関する協定届(36協定)
- 「マージン率等の情報提供」に関係する資料
- 「待遇に関する事項等の説明」に関係する資料(労使協定方式等を含む)
- キャリアアップ教育訓練に関する資料
- 雇用安定措置に関する資料
上記のとおり労働局調査では多くの書類を扱います。
いきなり調査となっては対応に苦慮することでしょう。
調査対象となったときのために、日頃からこれらの書類を確認・整理しておいてください。
派遣先企業に対する調査
労働者派遣法により、派遣元企業が労働局調査を受けるわけですが、その際に派遣元企業は労働局へ「派遣元管理台帳」を提出します。
この派遣元管理台帳をもとに、派遣先企業も労働局の調査対象とされるケースがあるのです。
派遣先企業が労働局から調査される書類は、概ね次の内容です。
- 派遣社員の契約書
- 派遣社員の就業状況がわかる書類等
- 派遣先管理台帳
- 抵触日通知書
- 意見聴取通知書(3年を超えて、派遣契約を延長した場合)
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先にもお伝えしたように、労働者派遣法はたびたび改正される法律。
労働者派遣法は、今後もこれに限らず細かく見直されていくでしょう。
そしていつ、どの企業へ労働局の調査・定期指導が入るかはわかりません。
今のうちから自社の人材派遣に対して、しっかり管理・運用ができているか、書類は整理できているか等を確かめておくとよいでしょう。
またこのような心配事がないよう、派遣社員の契約内容や労働状況を管理できるシステムを導入すると便利です。
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